フィギュアスケートの世界

パトリック・チャンのスケートはなぜあんなに滑るのか

こんにちは、MAYです^^
 
 
以前の記事のコメント欄にてrikaさんから
 

『この前、JOとCaOIを観に行ってきました・。
パトリックの「ショパンメドレー」素晴らしかったです・・・。
ただ、細かいステップや・・、今回のプログラムの本当のすごいところは、
なかなか分かりません・・・。
お時間がある時に、パトリックの新プロを解説してもらえますか?』
 
 
 
とあったので、今回の記事では
パトリック・チャンの新プログラムについて
私なりの解説をしていきたいと思います。

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で、新プログラムの解説をする前に
タイトルの話をちょっとさせてほしいのですが
 
 
 
 
『パトリック・チャンのスケーティングって
なんであんなに滑るの!?』
 
 
これは、たとえ彼のファンでなくても
一度は思う事なのではないでしょうか。。笑
 
 
 
チャンって、ほんとにスケーティングがよく滑る選手です。
 
 
 

ショート、フリーの一番最初に
4回転―3回転のコンビネーションを持ってくることが多いですが
 

一般的に
・スケーティングが良く伸びる=スピードが半端なく出る
 

そして、チャンの場合
そのスピードを一切殺さずに4回転を跳ぶことが出来るので
(この凄さを何と言ったらいいんだろう・・・)
素晴らしい4T-3Tになっているんです。
 
 
スピードが出ていて、ものすごく幅が出るので
いつも壁に激突してしまいそうになっていますよね。笑
 

他の選手は、演技を大きく見せるために
リンクサイドの端から端まで”意識をして”滑ろうとするのですが
もはやチャンにとってはそんな意識さえ必要ないのかもしれません。
 
 
 

普通に滑ってればリンクを超えてしまうのですから。笑
超えないように意識しているかもしれません。笑
 
 
 
そして、本題のなぜあんなにスケートが滑るのか。。
 

それは、もうスケートのエッジに乗る位置が天才的、
という事に尽きるのではないでしょうか。
 
 
 

私がいつもイメージするのは、上質なお肉です。
(何言ってんだと思った方はスルーしてください。笑
伝わるかどうか自信がないのでw)
 
 
 

上質なお肉はナイフをトンっと、お肉の上に置いただけで
そのナイフがお肉の上にめり込んでいきます。
 

力を入れなくても切れる、柔らかいんですよね。
 

この時、うまみたっぷりの肉汁が出ます。
 
 
 

スケートの場合、これの逆で
ナイフ(エッジ)がお肉(リンクの氷)を
いかに多く溶かせるか、が重要になってくるのです。
 
 
 

つまり、パトリック・チャンの場合
そのエッジをトンっとリンクに置くだけで
たくさんの氷が解けだす。
 

それは、彼のエッジに乗る位置が最高だからであって
 
 
 

氷が溶けることによって、摩擦が少なくなり
彼がほんの少し力を入れるだけでグンっと進んでいく。
 
 
 

しかも、このエッジの最高にいい位置に乗っている状態が
ステップ中も変わらないのが凄いんですよね。。
 

ステップでぐんぐん進んでいるところとか
私の全力の速さで進んでいるところと
変わらない(むしろチャンのステップのが速いw)んじゃないんでしょうか。

いつものスケート関係者の知り合いは
実は、パトリック・チャンのスケーティングは
そこまですごくない、なんて言っていました。
 

でも、生で練習を見る機会があって
考えを改めたそうです。笑
 

『あれはすごかった!!』と興奮気味に教えてくれました。
 

何が凄いって
『リンクの端から端まで(ストレートラインステップをする長い方です)を
まったくエッジで氷を押さずに4歩で行ってしまうんだよ!』
とのことでした。
 
 
 
・・・・・・(゚Д゚)
 
 
 
スケートリンクの大きさはルールにより決まっており
・「60m×30m」が望ましく、また、これより大きいサイズでないようにする。
・「56m×26m」以上のサイズであること。
 

となっています。
 
 
 
つまり、チャンは
56m~60mの距離を
まったくエッジで氷を押すことなく
リンクの端から端まで
たったの4歩で滑って行ってしまう
 

ということだそうです・・・
 
 
 

うそーん(゚Д゚)
 
 
 

ますます、チャンの演技を
生観戦したくなりました・・・
 
 
 
 

で!
だいぶrikaさんの質問から脱線してしまいましたが
(すいません!)
 

パトリック・チャンの今回のプログラムの凄いところは
今までのプログラムでもそうだったんですけれど
体のコントロールかな、と私は思います。
 
 
 
スケーティングの素晴らしさは、この記事で
いっぱい書いてしまったと思いますが
 

さらにそれを際立たせる体のコントロール
 

背筋がどんな体勢になってもピンと伸びている
見上げる振付があってもそれが崩れない
 

そして、私は演技後、
彼があんまり疲れている顔になっているのが
記憶にないのですが
 

それも、スケーティングが良く滑ることに
関係しているのではないかと思います。
 
 
 

普通の選手が頑張って一歩一歩
氷を「押して!押して!」とやっているところを
彼はちょっと漕ぐだけでトップスピードになってしまいますから。
 
 
 

スケーティングが良く滑る=疲れにくい
なんですよねぇ。。
 

だから、有名なクラブチームだと
将来を有望視されている子たちも
ジャンプよりもスケーティングを
頑張って教えたりしています。
 

(もちろん、滑らないスケートなんて
いくらジャンプが決まっても見栄えしないなどの
理由もあるんですが)
 
 
 
スケートが滑る分、チャンのプログラムには
止まるところがたくさんあります。
 
 
 

ずーっと滑っているプログラムより
そちらの方が観客やジャッジの印象に残ります。
 

スケーティングが得意な選手でなければ
『せっかくスピードが出て今いいところなのに!』
ということで、止まるのを嫌がりますが
チャンの場合2、3歩でトップスピードに到達しますから
なんの問題にもならない。笑
 
 
 
と、まあこんなところでしょうか。
 
 
 

ステップの詳しいところ(一つ一つの技名とか?)を
知りたいという事であれば
また、スケート関係者にでも聞いてみます~
 

(勝手に私だけで判断すると間違えてしまいそうなので)
 
 
 

ということで、rikaさんの知りたいパトリック・チャン選手の
記事に少しでもなっていればいいのですが・・・
 
 
 
rikaさん、ご質問ありがとうございました!!
 
 
 


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  1. 回転不足について思うこと

    2013年12月8日22:44

コメント

    • rika
    • 2014.10.19 12:39

    MAYさん、詳しく解説して下さって、ありがとうございました(*^▽^*)。ほんとうに読み応えがあります。

    *スピードを一切殺さずに4回転を跳ぶ・・・。
    観ていたのが、ロングサイドのやや端よりの席だったんですが、ちょうど目の前でパトリックが4T-3Tを跳んだんですが・・・、他の選手と入ってくるスピードが全然違うので、こわいくらいでした・・・。

    パトリックには、リンクが1.5倍くらいあると、他の選手と同じくらいになるのかと・・・・。

    *氷が溶けることによって、摩擦が少なくなり、彼がほんの少し力を入れるだけでグンっと進んでいく・・・。
    リンクの端から端までまったくエッジで氷を押さずに4歩で行ってしまう・・。
    私も、観戦に行った試合やショーで何度も数えました・・、確かに4歩で充分なようです・・・。

    MAYさん、絶対観に行かないと・・、現役選手の時代に・・・。

    *スケートが滑る分、チャンのプログラムには、止まるところがたくさんあります・・・。
    今回のショパンメドレーで、トリプルループを降りた後に・・、ピタッと止まるところがありましたよね。
    あんな風に止まれるもんなんでしょうか・・・??

    *ステップの詳しいところを知りたいという事であれば
    また、スケート関係者にでも聞いてみます~
    是非、お願いしたいのですが・・、お時間のある時で、もちろん構いませんので・・。

    今年は、休養宣言をしているので、試合が見れないのが残念ですが、日本によく来てくれるよになりましたよね・・。
    1月のSOIで、また観に行きたいと思っています・・。

    お時間がかかったカと思いますが、詳しい解説を本当にありがとうございました・・。
    また、お邪魔させて頂きます・・(‐^▽^‐)。

    • kou
    • 2014.10.19 15:03

    こんにちは。
    初めて生で見たときは素人ではありますが、あのスピードと滑らかさに驚いたことを覚えています。でも良くわからないのですが、何かもうちょっと・・・。と思うのです。手?腕?うまく説明できませんが。

    また 教えてください。
    例えば3回転が2回転になった時は < がつきアンダーグレードとなりますが、中には1つ回転がすっぽ抜けたように見えるのに2回転と認定されていて加点が付いているように思います。
    これはどのように理解したらいいのでしょうか?

    • kou
    • 2014.10.19 18:29

    何度もすみません。

    スピンでレベル4よりもレベル3に加点が多くついてレベル3の方が得点が良い時があります。確かにレベル3のスピンはとってもきれいでした。
    ただ時間内に収まらなかった。
    レベル4のスピンも良かったのです。このことも私の中で、何かスッキリしないのです。よろしくお願いいたします。

    • きれじろう
    • 2014.10.19 19:36

    kouさん

    はじめまして。

    >3回転が2回転になった時は < がつきアンダーグレードとなりますが、中には1つ回転がすっぽ抜けたように見えるのに2回転と認定されていて加点が付いているように思います。

    3回転が2回転になったときは、単純に2回転としてカウントされます。
    テクニカルパネルやジャッジパネルは、予定構成で3回転であろうとなんであろうと、実際に跳んだのが2回転であれば、あくまで「2回転でどうなのか」という判断しかしません。

    一方「<」は、あくまで「3回転だけど、概ね180度以上回転が足りなかった」ときに適用されます。

    すっぽ抜けたように見えても2回転で加点がついている場合は「2回転で質が良かった」ということです。

    • きれじろう
    • 2014.10.19 20:59

    すみません。ぼーっとしてて間違って書いちゃった。

    「<」:アンダーローテーション:1/4の基準(概ね90度)足りないとき
    「<<」:ダウングレード:1/2の基準(概ね180度)足りないとき

    です。すみませんでした。

      • kou
      • 2014.10.19 21:23

      回答 ありがとうございました。

      アンダーローテーションのこと、私が間違っていたのですね。
      ごめんなさい。
      また一つ学びました。ありがとうございました。

        • きれじろう
        • 2014.10.20 0:48

        MAYさんもおっしゃるように、疑問点があればどんどん質問してくださいね。
        ロワゾーさんもテクニカルハンドブックや色々な資料を見てしっかり勉強しておられますし、私も調べてどーしよーもなくなったときは審判とチャネルのある元スケーターさんに聞いて確認をしてます。
        んで、MAYさんは現役スケーターという絶対的強みがあるので個々の技の難しさを熟知されてるでしょうし。

        競技界を純粋に楽しめてる分には良いのですが、疑念が出てきた時はルールを知るしかありません。
        そしてルールを知れば、大概は「なーんだ。そんなことだったんだ。」になってネットのいい加減な情報に惑わされる事も無くなります。

    • きれじろう
    • 2014.10.19 21:44

    kouさん

    ・レベル(所謂「基礎点」)獲得要件:別記事でロワゾーさんが説明されていたように「スピンは上述の基本3姿勢で少なくとも2回転以上回らないといけません。」等の要件が満たされているか(テクニカルパネルの仕事)
    ・GOE(所謂「加点」)獲得要件:質が優れているか(ジャッジパネルの仕事)

    で、「評価」としては別物です。

    つまり、これは戦い方の問題で
    ・レベル3構成で高いGOEを目指す
    ・レベル4構成で基礎点を多く取る
    ・自信があればレベル4構成で高いGOEを取る
    という選択肢が生まれます。
    選手のみなさんはそれぞれのスキルに合わせて柔軟に戦略を選択しているでしょう。

    なお、2006年トリノ五輪直後、当時解説をされていた五十嵐さんが雑誌に語っておられた新採点のポイントを下記に箇条書きしておきます。
    これを元にその後の各選手の戦略を眺めて見ると面白いかもしれません。

    続く

    • きれじろう
    • 2014.10.19 21:45

    続き

    ・新採点は評価されるポイントとミスをすることの怖さを知る必要がある。新採点方式では、完成していないものはプログラムに入れるな、と言っている。だから勝つためにはまず完成させることが必要だ。

    ・同時にクオリティを上げろ、とも言っている。スケーティングスキルを初めとする全ての技術のクオリティを上げなさいということ。

    ・日本の選手の場合、ジャンプが跳べたところで完成したと言っている。でもそうじゃない。降りるのは当たり前で、その中で出来の良い悪いがある。

    ・特にシングルはごく数人を除いてステップが下手すぎる。その原因はコンパルソリーが無くなったこと。今は殆どの選手がターンするけれどフラットエッジに近い。エッジをフルに使ったステップとは何かを真剣に考えないとステップはいつまでたっても上手くならない。

    ・新採点は、選手にとっては厳しい話だが、曖昧なものは許さない、だからいいものを目指して頑張れと言っている。しかし、そうすると難しいステップを山盛りにすれば点数が取れると安直に考える人が出てくるかもしれない。でもそうじゃない。ステップを盛り込み過ぎると滑りこなすためのスピードが落ちて滑りが汚く見えることになる。それなら盛り込まないでレベル3でスムーズにすべる方がいいのか?でもそうするといつまでたってもそれ以上はいけない。上に行くためにはレベル4のステップをやってください、でも質が悪かったら減点しますよ、と新採点方式は言っています。

    ・ステップを山盛りにした結果、ステップのグレードが下がるだけでなく、一歩間違えるとスケーティングスキルも落ちる。滑れていないことが見えてしまうから。そういう意味ではいろいろな側面から総合的に判定出来るシステムになっていると思う。

    ・・・・・以上ですが、ちなみに

    >ただ時間内に収まらなかった。

    とは何を指しておっしゃっているのでしょう?

      • kou
      • 2014.10.20 14:16

      こんにちは。お世話になります。

      “時間内に収まらなかった” というのは、
      曲が終わってもスピンをされていたのです。

      多分回転数が足りなかったので、
      曲が終わっても回っていたのかなとも思います。

      丁寧にご説明いただいてありがとうございました。

      五十嵐さんの語られていた文章もありがとうございます。
      若いスケーター達がこの文章を読んでくれるといいのにと思いました。

    • きれじろう
    • 2014.10.21 0:20

    kouさん

    わざわざご回答有難うございます。

    >曲が終わってもスピンをされていたのです。

    あれれ?先日のジャパンオープンのチャン選手の演技のことですよね。
    もしかしてピアノの一番最後の音を聞き逃しておられませんか?
    音楽に合わせて終わっているように見えるんですけれども・・・。
    タイムオーバーで減点された形跡もないですし。

    >五十嵐さんの語られていた文章もありがとうございます。
    若いスケーター達がこの文章を読んでくれるといいのにと思いました。

    大丈夫ですよ。きっと。恐らく大概のコーチの皆さんは十分理解されたうえで選手に教えつつ、ステップアップさせてると思いますよ。

      • kou
      • 2014.10.21 22:49

      今晩は。 お世話になります。

      チャン選手ではなくて、JrGPS フランス クールシュベル大会での 
      ロシアの女子 メドヴェドワ(Evgenia・MEDVEDEVA)選手の
      演技です。もしかしたら私の見間違いかもしれませんが。
      チェコ オストラバ大会の演技は観ていないのです、YouTubeで観てみます。
       
      彼女はJrGPFに出場します。

      • kou
      • 2014.10.21 23:05

      何度もすみません。フランス・クールシュベルとチェコ・オストラバを見たのですが、どちらもオーバーしていませんでした。
      わたしの勘違いでした。申し訳ありませんでした。

    • きれじろう
    • 2014.10.22 0:04

    わざわざ報告していただき恐縮です。
    有難うございました。

    • ERI
    • 2014.10.23 12:29

    はじめまして!
    以前から読み逃げ(すみません!)させていただいてました。いつも記事がアップされるのを楽しみに待っているMAYさんファンの1人です。
    MAYさんの公平な視点が好きです。
    私は2013年のロンドンで行われた世界選手権とスケートカナダでチェン選手を生でみました。素人の私でもそのスケーティング技術が群を抜いていることは分かりました。(デニス選手に優勝してもらいたかったですけどね)彼の表現は(うまい下手は抜きとして)あまり好きなほうではないのですが、それでも目が離せなくなります。
    ずっと見続けて応援してきた日本の選手達が引退されたり休養されたりして、今年はどうしようと悩みましたが、スケートカナダ見に行くことにしましたよ。

    • きれじろう
    • 2014.10.25 23:49

    ERIさん

    はじめまして。MAYさんの舎弟+用心棒のきれじろうです。

    >スケートカナダ見に行くことにしましたよ。

    いいなぁ。レポ待ってます。

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