フィギュアスケートの世界

ローリー・ニコルが語る高橋大輔のすばらしさ ビートルズメドレーに込めた思い

ローリー・ニコルが語る高橋大輔のすばらしさ ビートルズメドレーに込めた思い

こんにちは、MAYです。
 
ちょっと前の記事になってしまうので
スケートファンの方であれば目にした人が多いと思うのですが
このホームページの方針として載せないわけにはいけない!
 
ということで、icenetworkに2013/12/20に記載された
記事の日本語訳を載せたいと思います。
 

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(日本語訳はお借りしました。ありがとうございます)
 
ローリー・ニコルが語る『ビートルズ・メドレー』
(icenetworkの記事はこちら
 
 
 

(日本語訳開始)
 
タカハシとニコル、ビートルズフリーで共演
 
著名な振付師、プログラムを‘詩のようで奥深い’と語る
 
 
 

「ダイスケは、与えられた感情や動きをするのではなく、
その動きや深い感情は彼の内側から溢れてくる」
─と、ローリー・ニコル。
 
 
 

ニコル。
 
彼女は、エヴァン・ライサチェクを
2010年オリンピック金メダルへと導いた有名な振付師だが、
高橋大輔の新しいFS、ビートルズ・メドレーを振付けた。
 
2つの偉大な才能が直接出会い、組んだのは、
これが初めての事だ。
 
彼女は、高橋とともに経験したあれこれや、
この注目すべき作品に彼女が注いだ思いについて、語ってくれた。
 
 
 

高橋は12/20-23に、埼玉で開催される全日本選手権大会に出場する。

 
 
 

Icenetwork: 今回、どのようないきさつで、彼と組むことになったのですか?
昨年はほぼ実現しかけていたのに、出来なかったということですが。
 
 

Nichol: 世界選手権直後に、ダイスケが私に連絡してきたのです。
今年は、計画も実行も、順調に行きました。

 
 
Icenetwork: 一緒にやって、彼のスケーターとしての最高の特徴は、
何だと思いましたか?
 
 

Nichol: 彼にはとても多くの“最高”があるのに、
どうしたらその中のたった1つだけを選べますか?
私たちは、お互いのことを殆ど知らなかったけれど、
それでも私は何故だか彼の心がわかったように感じました
—もちろん、細かいところまではわからないけれど。
でも、核となるもの、深み、そして誠実さ。

 
 
彼は、新しいスケーティング技術や
新しい動きを学びたいと強く望んでいて、
それが本当に興味深かった。
 
ビートルズ音楽の心と私のスケート哲学に、
彼は心を開いて自分を委ねてくれました。
凄く楽しくもあったのです。

 
 
最初彼は、自分自身に対しても、その上、
恐らく私に対しても、確信を持てなかったのでしょう。
独創的な動きをしては、くだらないかなと感じている様だったし。
 
そして私にしても、かなりナーバスでした。
それは、私を信頼してくれた、
この高貴で魅力的な人の期待に応えるということに、
とてつもなく大きな責任を感じていたから。

 
 

Icenetwork: 貴方が過去に振付けたエリートスケーター達と、
彼に、何か違いはありましたか?
 
 

Nichol: 多くの素晴らしいスケーター達は、彼らをトップへと導く、
極めて同じような個性・特徴を持っています。
私がこれまで振付けた素晴らしいスケーター達は、
自分に自信を持っているということと、
完璧主義者だということの、
どちらにも偏らない絶妙なバランスを持っていました。
 
 
それゆえ、ある意味、自分がどれ程素晴らしいのかを、
横目で見るような感覚を持っています。
 
そもそも、世間の人々が、才能に恵まれ、熟達した、
驚くべき彼らスケーターが、
どれほど真に素晴らしいかを決して理解しそうにないことが、
いつも悲しいのです。
 
 

スケーターにはアスリート/アーティストという異なる側面があります。
 
ダイスケには、闘争心、無防備さ、情熱が、
非常に優れたバランスで備わっています。
 
彼が、とても誠実で、魅力的なスケーターである所以です。
 
彼は与えられた感情や動きを演じるのではありません。
 
それらは彼の内側から湧きあがり、外へと溢れ出るのです。

 
彼はとても恵まれたスケーターで、安っぽい演出にはなびきません。
私には彼に対して、とても楽しい空想を抱くのです。
 
 
 

もし、私が熟達した画家なら、楽しく描くことでしょう。
黒豹─この艶やかな黒豹が、情熱に身をしならせ、
魅惑的なエナジーを放ち、周囲の全てのものが、
そのオーラへと引き込まれていく─そんな絵を。
 
 
 

Icenetwork: 彼のどんな資質を最も引き出したいと思いましたか?
具体的に何かありましたか?
 
 

Nichol: 彼のスケーティングスキルを向上させ、
官能的な魅力を更に強め、かつ、
感じるままに演じる余地を与えたいと思いました。
 
 

Icenetwork: 貴方の演出の根底は、
常にスケーティングそのものにありますよね。
彼のスケーティング技術をどう見ましたか?
 
 

Nichol: 私はいくつか課題を与えて、
彼がどのように膝や足、傾き、力などを使うか、
じっくりと見ました。
私がとても若かった時、幸福にも習う事が出来た、
古くからの世界的図形であるSを、彼に教えたのです。
私はとても幸運なことに、
Philadelphia Skating Club and Humane Societyでトレーニングし、
氷上における理論とアートの両面から、スケートの歴史を学ぶことが出来ました。
そしてこの20年、世界中のスケーターやコーチに、
それを伝えることを使命としてきました。
 
 

エッジに対する体の重心、膝・足・ブレードの動き、
これらについてスケーターが理解しているかどうか、
評価できるたくさんの事が、この(Sという)小さな形にある。
そしてその人に応じて、スケーティング技術や課題を教えるのです。
私の目的は、何か新しいものを彼に提示することだった。
子供のように、もう一度スケートに出会い、好奇心と意欲をかきたてられるように。
 
 

Icenetwork: 彼の新しいフリープログラムについて聞かせてください。
曲はどのようにして選んだのでしょうか。
そして、貴方のビートルズ・メドレーに託された思いは何なのでしょう。
 
 

Nichol: 何か違うもの、何かファンに感謝を示すものをやりたいという、
彼の言葉が頭にありました。タンゴでの彼は素晴らしいけれど、
全てがタンゴというプログラムにはしたくなかった。
ビートルズナンバーのタンゴバージョン、
“Come Together”は、ずっと私が温めていたもので、
永い間、これにぴったりなスケーターを、ずっと待ち望んでいたのです。
それから、そのパートと組み合わせて、
ルールに沿ったエレメンツを組み込む、その他の曲選びでした。
 
 
“Yesterday”から始めるのは、とてもいい考えだと私は思ってます。
最初の技に向かう彼の気持ちにとって最高というだけでなく、
過去を肯定し、過去のこと・良かったこと・悪かったことから、
次の段階へ進むということだから。
 
 

“Come Together”のステップはすごく楽しかった!
このステップを、私は本当に誇りに思います。
芸術作品だと思う。ダイスケだけがあんなふうに出来るのです。
艶やかで熱情にあふれた獣のように。
その後、彼のもう1つの別の魂が開かれるべきだというような、
ノックの音(※come togetherの終わりに入る、拍子木のような連続した音)が響きます。
 
 

ビートルズのプロデューサー、
ジョージ・マーティンによる“Friends and Lovers”へ。
彼は観客の方へ振り向き、すうっと寄って行くのです。
磁石のように私達を引き付けながら。
彼は友人や恋人の為に、そして、友人や恋人がいるから、滑る。
彼はみなを愛し、みなに感謝しています。
 
 

でも、“In My Life”へ移っていくと、
そこで彼はSの図形を描きます。
描きながら、…詩のような言葉…
“あなたを何より愛していた”と歌う─そんな身振りを、彼はします。
 
 

“The Long and Winding Road”は、…今がまさにそう!
人生は長く曲がりくねった旅路。
だからこそ、楽しんで、祝福して。人生は一度きり。
個人的には、このプログラムは、詩のようで、とても奥深いと思う。
ダイスケだけが、出来るのだけれど。
人々が、心から理解ようとしてくれ、
感じとってくれるといいなと思っています。
 
 

Icenetwork: オリンピックイヤーに彼と、もしくは彼以外の誰かとでも、
初めて組むというのは、余分なプレッシャーがあるのですか。
 
 

Nichol: ええ、更なるプレッシャーを感じました。
控えめに言ってもね!
彼は神がつかわしたようなスケーター。
しかも、沢山の素晴らしい振付師達と組んできているのに、
このオリンピックシーズンを彼は私に預けたのだから。
 
 

その責任はとても深刻で、不安でなかなか眠れなかったことも。
でも、自分の年齢・経験、そして大チャレンジ歓迎!
という自分の気質に、感謝もしました。
 
 
彼が傲慢でないどころか、優しいということを沢山の人から聞いていました。
この事は、仕事を引き受ける決断をする上でとても重要だったのです。・・・
傲慢さや押しの強い態度は上手く受け入れられないですから。
私宛の彼の手紙には、学び、創造していく事への深く強い欲求が見てとれました。
 
 
Icenetwork: ビデオで彼の演技を見る機会があったなら、
どう思ったか教えてください。気に入りましたか?
 
 

Nichol: スケートアメリカからNHK杯への進歩を見て、
とても嬉しかったです。
もちろん、洗練させるべき細かな部分も多くあります。
でも、最も良かったのは、彼の闘争心と練習による明らかな成果です。
 
 
Icenetwork: ソチオリンピックに対する、貴方の予想は?

 
 

Nichol: 私は決して予想も期待もしません。
特にオリンピックに関しては!
私達の誰もができる事は、燃え続ける希望の炎と
素晴らしいパフォーマンスを心に描きながら、
計画的な日々の努力、質の良い練習、そしてあらゆる手段を尽くすことです。

 
 
そして、試合では、自分のやってきたことを信じ、
ただそれをやるだけ。それは結婚式みたいなもの。
もし、当日についてだけを考えていたとしたら、
そこに到るまでの旅路にある、楽しみ、喜び、
満足感のほとんどを失うことになってしまいます。
 
 
Icenetwork: 彼にメダルのチャンスはあると思いますか?
 
 
Nichol: もし、彼の素晴らしさを余すことなく表現する、
2つのプログラムをやり遂げることが出来たら、
そんな彼を見ることが、どんなに幸運な喜びに満ちたものか、
想像出来るでしょう?
きっと、誰にとってもそれは特別な日となり、
フィギュアスケートの芸術の進歩という、最高の日となるでしょう。
 
(日本語訳終了)

ビートルズメドレーのテーマは『愛』。
そんな意味を込めて滑るという話を聞いて
そのときにはあまり理解できなかったことを覚えています。
 
ただ、このニコルの話を聞くと
高橋選手がどんな思いで滑っていたか、
ニコルが振り付けにどんな意味をこめたのか、
ちょっとだけ分かったような気がします。
 
 
(彼女ほどの振付師ともなると選手を勝たせるだけでなく
スケートの将来のことも考えて作っているのだなあ、と。)
 
私が、ビートルズメドレーのプログラムを見たときに
感じたことは『なぜ、こんなやさしい曲にしたのだろう』
ということでした。
 
もっと、インパクトのある曲の方が
お客さんものりやすいのではないか。
 
オリンピックシーズンなのだからもっと、もっと・・・
という思いでいっぱいでした。
 
振り付けはカッコいい。
スケーティングは相変わらず素敵。
 
でも、この曲で金メダルを狙うの?
 
という疑問があったのです。
 
 
でも、滑りこなすごとに良くなっていって
どんどんこのプログラムが好きになっていって
 
全日本選手権、ジャンプをいくつかミスした後の
最後のコレオステップは
思わず現地で観戦しながら泣きそうになりました。
 
まるでお客さんに『ありがとう』と
お別れを言っているように見えたから。
(あまり私はそんなことを言わない人ですが
そう見えてしまったのでこういう発言を
許してくださいね。)
  
あの日が、最後じゃなくてよかった。
 
彼の怪我の状態はわかりません。
どんな調子でこのプログラムを滑ることになるかも
本人さえ予想がつかない状況じゃないかと思います。
 
もう、見守るだけです。
 
 
ローリーニコルに
『神がつかわしたようなスケーター』
と言わしめる高橋大輔。
 
 
彼に関して語りたいこと・ここに書きたいことは
たくさんありますが、きっとそれはまだ早いですね。
 
彼が、現役を終えるときにでも
書くことにしようと思います。
 
 
読んでくださってありがとうございました。
 
 


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コメント

    • cocoro
    • 2014.01.08 19:22

    私も全日本を現地で観戦していて最後のコレオステップのところで泣きそうになりました。
    オリンピック出場が決まった今となっては「あの時の私が泣きそうになったのは何だったんだろう?」と思いますが、高橋選手はそういう所も含めてお客さんの心を揺り動かすことが出来るすごい選手だと思います。
    ローリーの言葉もとても素敵ですね。
    オリンピックでは是非、喜びのコレオステップが観れることを期待したいです。

      • MAY
      • 2014.02.08 14:25

      cocoroさん、コメントありがとうございます。

      cocoroさんもそうでしたか。
      ほんとに、いつもの日常生活に戻ってしまうと
      あの日泣きそうになったのも、代表発表の時に泣きそうになったのも
      何だったのかなと思ってしまいますよね。笑
      そうですね、泣いてしまうくらい心を揺り動かされたのですよね。
      ローリー、厳しくそして素敵な人ですね。
      喜びのコレオステップ観たいですね~
      その日がフィギュアスケートにとって最高の日になりますように!

    • union
    • 2014.03.23 10:56

    ローリー・ニコルさん、デニス・ビールマンさん
    世界フィギュアスケート殿堂入り!(icenetwork.com 2014年3月14日付)
    おめでとうございます!

    http://web.icenetwork.com/news/2014/03/14/69270722/nichol-biellmann-make-world-figure-skating-hall

      • MAY
      • 2015.10.03 11:40

      unionさん、コメントありがとうございます。
      (今更のコメントになってしまいすみません。)

      ローリーニコルさんとデニスビールマンさんは
      この時に殿堂入りしたのですね!
      ローリーは振付師として初の殿堂入り。
      まだまだ彼女の振付を楽しみたいです。

    • ミミエデン
    • 2014.12.24 16:58

    はじめまして。
    1年近く前の物へのコメントお許しください。
    ずっと大輔さんのファンで、彼が一線を退いてからはさみしくて、いろいろな人のブログをみたり動画めぐりをして今日初めてMAYさんの文章を読みました。
    多くの方が大輔さんの魅力を語り、私自身も私なりに彼の魅力について毎日のように考えていたなかで、また、今日新しい一面を発見させていただきました。
    私は読む専門で、めったにコメントはしないのですが、感動のあまり
    コメントさせていただきます。ローリーさんの言葉をこんなにたくさん読ませてもらったのは初めてです。MAYさんのようなスケートの知識をお持ちの方が、大輔さんのことを素晴らしいと評しておられることが本当に感激でした。
    とくにうれしかったことは、彼の優しさに触れ、しかもそれが演技のマイナスでなく、演技の中に生きている、とされていたことです。何となく感じていたことを、確認したような気持になり、うれしかったです。なぜ彼の演技に惹かれるのかわかるような気がしました。ありがとうございます。
    大輔さん以外のページも楽しませてもらいます。

      • MAY
      • 2015.10.03 11:47

      ミミエデンさん、コメントありがとうございます。
      (今更のコメントになってしまいすみません。)

      高橋大輔さんのファンなのですね^^
      ずっと応援していた選手が試合に出なくなってしまうと
      仕方のない事とは分かりつつ、本当にさみしいですよね。

      そんな嬉しいお言葉をかけていただいて、、、
      ありがたく頂戴いたしますm(__)m

      スケートを知れば知るほど
      高橋大輔というスケーターが
      どれだけ美しい踊り、プログラムを滑っていたのかに
      気づかされる日々です。

      >とくにうれしかったことは~
      おお、そうでしたか^^
      ほんとに彼の優しさは、演技の中に
      確実に生きていると思っているのです。
      そういう、一見勝負の世界で不向きにも思えるものを
      ビートルズメドレーで表すことで彼の魅力を存分に
      みせてくれたのかな、なんて思います。

      こちらこそありがとうございます。
      また遊びに来ていただけたらと思います。

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